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其処は真っ白な世界だった。
白い光。
白く白く白く白く。
何も見えない。
その中を歩いている。
もうずっとずっとずっと。
いや、泳いでいるのかも知れない。
それとも、もしかして飛んでいるのだろうか。
唯何処までも白く白く。
ぼんやりと漂っている。
と。
白い世界にの中に一つ、黒い点。
それは何時も唐突に。
-------あぁ。また来たのか。
意志を持って、其方へ向かう。
ゆっくりゆっくり。
その黒いシミが大きくなって来る。
ゆっくりゆっくり。
視界に、黒の割合が増えてくる。
だんだんと、その黒いものはヒトノカタチを成した。
だんだんと、ヒトノカタチは少女と成った。
膝を抱えて蹲った少女。
二つのおさげがゆらゆらり、揺れている。
赤いTシャツが、白に慣れた目に痛い。
-------何をしに来た。
-------帰り道が分からないの。
此方を見上げた少女の顔は、涙で濡れていた。
何を悲しんでいるのか。
久しく意識していなかった、己の手を、差し出す。
-------君の帰るべき場所に、連れて行ってあげよう。
-------本当に?
-------当然だろう。
少女は困惑した顔で、それでも手を握り返してきた。
私達が手を握り合った瞬間。
白い光が少女に収束する。
輝く白に何を見たのか、迷子は涙に濡れた顔で微笑んだ。
「ありがとう」
-------何に対しての礼だ?
問う前に、少女の姿は白に塗りつぶされていた。
ふと思う。
この白い空間の中。
あの少女は、下が何処だか分かっていた。
しゃがみ込んでいた。地に足をつけて。
迷子がしゃがみ込んでいた場所から。
白い白い白い空間に。
黒いシミが。広がって行く。